
オンライン診療をめぐる景色が、2026年を境に大きく変わりました。
2025年12月に公布された改正医療法により、オンライン診療は2026年4月1日から医療法上に明確に位置づけられました。これまで厚生労働省の指針(ガイドライン)をよりどころに運用されてきたオンライン診療が、法律上の制度になったのです。コロナ禍の特例から始まり、初診からの実施が制度化され、そして法制化へ。約6年で、オンライン診療は医療提供体制の「正式な一部」になりました。
法制化で何が変わったのか
ポイントは大きく3つあります。
第一に、オンライン診療を行う医療機関には届出が求められるようになりました。第二に、従来の指針に代わって、法的拘束力を持つ実施基準に沿った運用が求められる枠組みへ移行します。第三に、不適切な実施に対しては、行政による指導や立入検査といった是正の仕組みが整えられました。
つまり、法制化は「オンライン診療がやりやすくなった」という話であると同時に、「いい加減な運用が許されなくなった」という話でもあります。実際、形だけの初診を挟んで翌日に向精神薬を処方するような、ルールの抜け道を突く事例への問題意識は、国の審議会でも繰り返し指摘されてきました。患者確認の方法、対面診療への移行基準、急変時の対応体制、処方できる薬の制限。問われているのは導入の有無ではなく、運用の質です。
「導入したけれど使われない」を避けるために
一方、現場に目を移すと、別の課題も見えてきます。システムを導入したものの、月に数件しか使われていない――そんなクリニックは決して珍しくありません。
理由ははっきりしています。オンライン診療が院内のオペレーションに組み込まれていないからです。どの疾患・どの患者さんに案内するのか、予約と問診の動線はどうするか、診療報酬上の施設基準の届出や算定ルールはどう整理するか、会計・処方(電子処方箋を含む)はどこまでオンラインで完結させるか。受付スタッフが患者さんに自然に案内できる台本があるか。ここまで設計して初めて、オンライン診療は再診の継続率向上や通院負担の軽減といった果実を生みます。
なお、保険診療におけるオンライン診療は対面より低い点数設定が基本であり、「儲かるから入れる」ものではありません。慢性疾患の通院離脱を防ぐ、遠方や多忙な患者さんとの接点を保つ、災害時や感染症流行時の備えとする。自院にとっての目的を定めることが、結局いちばんの近道です。
制度対応と現場設計、両輪で考える
法制化後のオンライン診療は、制度面の対応(届出、基準の遵守、研修、掲示物や同意書の整備)と、現場の運用設計(対象患者の選定、予約動線、スタッフ教育)の両輪が揃って初めて機能します。
このうち制度面は、まさに事務方の仕事です。厚生局への届出や基準の読み込み、改定のたびの算定ルール確認を、診療の合間に院長先生が追いかけ続けるのは現実的ではありません。オンライン診療を「看板倒れ」にしないために、制度に明るい事務長機能を院内外に確保しておくこと。それが、これからの時代にオンライン診療を武器に変えるための、地味ですが確かな条件だと思います。
(参考:「医療法等の一部を改正する法律」(2025年12月公布)、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」、社会保障審議会医療部会資料ほか)
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