
「医院がつぶれる」という言葉に、かつてほどの違和感がなくなってきました。
帝国データバンクの調査によると、2025年の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産は66件、休廃業・解散は823件にのぼり、いずれも過去最多を更新。合計では889件に達しました。過去最多の更新は2年連続です。東京商工リサーチの2025年度集計でも倒産は71件と、過去20年間で最多を記録しています。
休廃業・解散823件の内訳を見ると、診療所が661件と大半を占めます。10年前と比べて2倍を超える水準で、もはや一部の特殊な事例とは言えなくなりました。
倒産の9割は「患者減」と「過去のツケ」
倒産の原因を見ると、最も多いのが販売不振、つまり患者数や収入の減少です。これに過去の借入や設備投資の負担が重なる「既往のシワ寄せ」が続き、この2つで全体の約9割を占めます。
加えて、ここ数年の経営環境は控えめに言っても厳しい。人件費は採用難を背景に上がり続け、光熱費も医療材料も値上がりする一方、収入の柱である診療報酬は公定価格で、勝手に値上げすることはできません。「収入は頭打ち、コストは青天井」という構造的な苦しさが、数字となって表れた格好です。
そして倒産以上に深刻なのが、休廃業・解散の急増が物語る後継者問題です。経営者の高齢化が進み、引き継ぐ人がいないまま静かに診療を終えるクリニックが増えています。倒産のような派手さはありませんが、地域から「かかりつけ医」がひとつ消えるという意味では、影響はむしろこちらの方が大きいかもしれません。
それでも新規開業は続く――広がる「二極化」
一方で、興味深いことに、クリニックの新規開業意欲そのものは衰えていません。都市部では今も開業が相次ぎ、駅前には新しいクリニックの看板が立ち続けています。だからこそ2026年4月施行の改正医療法では、外来医師が多い地域での開業に事前届出制が導入されたわけです。
つまり今起きているのは、医療機関の総崩れではなく「二極化」です。経営を仕組みとして回せる医院は伸び、院長の頑張りだけに依存した医院は静かに体力を削られていく。同じ地域、同じ診療科でも、数年で差がつく時代になりました。
「診療の腕」と「経営の腕」は別物だと割り切る
筆者がクリニック支援の現場でつくづく感じるのは、経営がうまくいっていない医院の院長先生ほど、誰よりも働いているという事実です。診療を終えた後にシフト表を組み、レセプトを確認し、求人原稿を書き、業者と打ち合わせをする。倒れないのが不思議なくらいの働き方をされている先生が、本当に多い。
問題は努力の量ではなく、構造です。診療と経営という2つのフルタイム業務を、1人で抱えていること自体に無理があります。
幸い、いまは常勤の事務長を雇わなくても、経営管理の機能を外部に持つという選択肢があります。数字の管理、採用、労務、行政対応といった「経営の腕」が求められる仕事を専門家に委ね、院長は「診療の腕」に集中する。過去最多という統計が突きつけているのは、そうした役割分担を真剣に検討すべき時期が来ている、ということなのだと思います。
(出典:帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)」、東京商工リサーチ「2025年度 医療機関の倒産状況」)
「診療の腕」と「経営の腕」を1人で抱え込む前に。経営管理を外部に任せるという選択肢を、まずは比較表で確かめてみませんか。


