求人を出しても、誰も来ない。クリニックの採用難はなぜここまで深刻になったのか

求人を出しても、誰も来ない。クリニックの採用難はなぜここまで深刻になったのか

「求人媒体に3か月載せて、応募ゼロでした」

クリニックの院長先生から、こんな話を聞くことが本当に増えました。看護師、医療事務、視能訓練士。職種を問わず、「募集すれば人が来る」という前提は、もはや過去のものになっています。

数字で見る医療の採用難

感覚の話ではありません。厚生労働省の統計によれば、看護師・准看護師の有効求人倍率はおよそ2倍前後で推移しており、全産業平均の1倍強と比べて明らかに高い水準です。倍率2倍ということは、単純に言えば求人2件に対して求職者が1人しかいない状態。応募が来ないのは、貴院に魅力がないからではなく、そもそも市場に人がいないのです。

厚労省の需給推計では、2025年時点で必要とされる看護職員に対し、供給が最大で27万人程度不足する可能性が示されていました。団塊の世代が後期高齢者となり医療・介護ニーズが膨らむ一方、生産年齢人口は減り続ける。この構造は今後も変わらず、医療事務などコメディカル以外の職種にも採用難は広がっています。

クリニックには「しわ寄せ」が来やすい

そして厳しいことに、この採用難のしわ寄せは、小規模なクリニックにこそ集まりやすい構造があります。

大病院のように採用専任の部署はなく、求人票を書くのも面接の日程調整も院長先生かベテランスタッフの仕事。給与水準では大手法人や訪問看護ステーションと競り合い、教育体制や福利厚生でも見劣りしがちです。さらに数名で回す職場では、1人の退職が即、診療体制の危機に直結します。「辞められたら困るから強く言えない」という空気が生まれ、組織の規律が緩んでいく――そんな悪循環に陥っている医院も少なくありません。

2026年度診療報酬改定でベースアップ評価料などの賃上げの仕組みが拡充されたのは追い風ですが、原資ができても、採用・定着の仕組みがなければ人は集まらず、残ってもくれません。

「採用」より先に「辞めない職場」をつくる

では、どうするか。逆説的ですが、採用難の時代にまず取り組むべきは採用活動ではなく、定着です。

いま働いてくれているスタッフが辞めない職場は、求人市場でも強い。労働条件の明文化、評価と昇給のルール、シフトの公平性、院長とスタッフの間に立つ相談役の存在。こうした足場を固めたうえで、自院の強みを言語化した求人原稿を作り、媒体・紹介会社・リファラルを使い分ける。採用は「出せば来る」作業から、「設計して勝ち取る」経営課題に変わりました。

正直なところ、これは診療と並行して院長先生が独力で担い切れる仕事量ではありません。労務の整備から求人戦略、面接同席、入職後のフォローまでを担う人材機能を、外部の事務長代行に持たせるクリニックが増えているのは、必然の流れだと感じます。人が採れないことを嘆く前に、人に選ばれる医院の体制づくりから。遠回りに見えて、それが一番の近道です。

(参考:厚生労働省「職業安定業務統計」「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」「医療従事者の需給に関する検討会」資料ほか)

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